新聞掲載情報   


■北國新聞 2007年12月25日掲載の記事より■

[ 女性の目 ]     ゆく年くる年 震災を乗り越えて


三月二十五日の能登半島地震から九ヶ月がたち、「復興元年」も間もなく終わろうとしています。新たな年を目前に、能登に住む人たちの胸にはどんな思いが去来しているのでしょう。輪島市の女性二人とラジオなどで人気の女性占い師に、行く年を振り返り、来る年について話し合ってもらいました。



能登の女の底力見せる

米山   今年は地震なしには語れない一年でした。商売に携わる身としては、すさまじい風評被害に苦しみ、「とにかく元に戻さなきゃ」と、それしか考えられませんでしたね。
    私は地震があった日、金沢市内の事務所で仕事をしていました。揺れはそれほど激しくなかったので、後で惨状を知って驚きましたよ。
大江   本当にすごい地震で、まるでジェット機が落ちたような衝撃でした。復興は確かに進んでいますが、現地に住んでいる者の実感としては、半分くらいといった感じですね。つめ跡はまだ多く残っています。
   大変だったんですね。ただ、県外から見ると、地震によって能登の名前が全国的に売れたように思います。一気に有名になったはずです。不幸中の幸いといいますか、考え方を変えれば地震によって得たものもあるんじゃないかな。
米山   おっしゃる通りです。「ピンチをチャンスに変える」という発想ですね。その姿勢が能登全体に求められています。本格的な復興は来年が勝負。落ち込んでなんかいられません。
大江   いつまでもくよくよしてたって仕方ありませんからね。能登の人は前向きですから。でも、来年は正月気分に浸れそうもありません。私は被害が少なかっただけに、まだ仮設住宅で生活されている方のことを思うとなんだか申し訳なくて…。正月はおあずけですね。



次第に上向く

   私の所には能登方面からいらっしゃる相談者も多いんですが、地震に関しては皆さん以外にケロッとしています。『起こったもんは、しょうがないや』って感じ。とっても明るいんですよ。地域柄ですかね。
米山   能登の人は本当に辛抱強いですから。特に女性はね。だから地震にもめげずにやってこれたんですよ。
大江   忍耐力もあるし、優しさもありますよ。「能登は優しや土までも」の言葉どおりです。今回の地震でも婦人会の活動を通して、能登の女性の優しさと団結力を感じました。
米山   来年の能登半島の運勢はどうですか、月先生。
   まず、日本全体で見ると、来年も今年と同様、「変動」の年になります。景気は悪く、厳しい時期がまだ続きます。でも、能登は良くなりますよ。最低の状況は脱しているし、先ほども行った通り、名が売れたわけですから。少しずつ上向きになっていくはずです。
大江   そうなるとうれしいですね。復興にあたっては石川県の他の地域や他県の方々にもお世話になり、言葉に尽くせぬほど感謝しています。その恩に報いるためにも、来年は気合いを入れないといけない。




癒やしの地に

   厳しい期間を乗り切るために必要なのは遊び心、息抜きです。最近、うつにかかる人が多いのは気分転換の方法がないから。旅行に行ったり、庭いじりをしたり…。何かリラックスできる時間を持つことが大切です。都会の人は特にそう。私の場合は温泉に行ったりしますよ。
米山   そういうことなら、能登は気分転換にもってこいです。空気も水も食べ物もおいしい。都会のギスギスした雰囲気に疲れたらぜひ、来ていただきたい。能登の地で得た癒やしが都会人の活力になるなら大歓迎です。それが能登の活力にもつながりますし。
大江   私たち婦人会も観光業の意気込みに負けていられません。能登全体に元気を与えるため、女性の底力を見せたいと思います。月先生の言われたように、楽しく活動できれば、もっといいですね。
   ちなみに能登の来年のラッキーカラーは黄色。運気を強め、人とお金が入ってくるようにするためです。能登のますますの発展を願う意味でも黄色を使ってほしい。私も応援しています。頑張ってくださいね。



・米山正子さん 旅館経営
輪島温泉観光旅館協同組合「おかみの会」会長。輪島市観光協会風評被害払拭委員長。同市河井町在住。

・大江恭子さん 主婦
2006年(平成18)年から輪島市婦人団体協議会長を務める。同市門前町在住。

・月 竜香さん 占い師
北陸放送のラジオ番組で、35年間、人生相談を続ける。名古屋市在住。



■北國新聞 2005年12月31日の記事より■

[ガチンコ討論塾]   子育てほど大変なものはない
      ゲスト 月竜香さん(ラジオ番組で人生相談)

一年を締めくくる大みそかに合わせ、北陸放送のラジオ番組で長年、人生相談を務めている月竜香さんと丹羽俊夫さんが対談「ガチンコ討論塾」を行いました。相談者のさまざまな悩みにズバリ答える竜香さんも、自分の人生で最も大変だったのは子育てのようです。体験をもとに熱い「子育て論」が交わされました。



丹羽   少しでも世の中のお役に立てればと教育相談をやってますが、この一年を振り返ると、日本は一体どうなった、と思うことばかりでなかったですか。
竜香   今、何が壊れているかといえば家庭ですよ。夫婦が壊れているから子育ても壊れている。まず、男の人が旦那らしくない。一つの舟に家族を乗せて漕ぐ力がないのね。舟が小さすぎて、すぐ転覆する。だから離婚も多い。
丹羽   男がだめなんかね。
竜香   男と女の心があまりにも離れている。男は結婚したら、もう俺の女だからと好き勝手する。女は違いますよ。この人とうまくいくか、だめなら別れようか、そんなことが常に頭の中にある。私が受ける相談には結婚したなりで、旦那とうまくいくか見てほしいというものも多い。
丹羽   そういうことは結婚する前に考えんがかね。
竜香   考えない。好きかどうかで結婚するから。そして、あの時あんなひどいことをいったとか、病気しても優しくなかったとか、女は旦那の許せないことをどんどんためていく。男はアホだから、その蓄積をまったく知らない。
丹羽   ためてためて、定年になった離婚ですか。
竜香   そう。男の人は今、会社大変でしょ。うつ状態になるくらい追い込まれるとか、クビになるかもしれんとか、仕事でヘトヘト。家に帰ったら寝るだけ。夫婦のまともな会話なんてない。でも女はね、旦那の愛情を感じるかどうかで頑張れもすれば、落ち込みもするんですよ。男がほんの少しでも女の心を分かってあげたら全然違う。




女は明るく

丹羽   女の方も結構足りないところがあるのでないですか。子どもを産めば母親としての責任がある。
竜香   私はいつもいうんです。女は常に明るく、そしてプラス志向でなければって。ラジオ相談でも子どもが暴れるとか、うつ状態になったとか本当に多い。その時、必ずいうのは、夫婦が子どもの前でふわぁとしたムードをつくることができれば、それ以上絶対悪くなりませんって。
丹羽   竜香さんは子育てで悩んだことなんかない?
竜香   私の人生でも一番大変だったのは子育てですよ。今、息子は就職し娘は来春、大学卒業ですが、本当に子育ての難しさを経験しました。特に息子は大学をさぼったり、春休みに髪を真っ青に染めてイヤリング三つもして…。
丹羽   そんな時、どんな対応をされたんですか。
竜香   とにかく聞き上手になることに徹しましたね。学校休んだ時も起こるんじゃなくて、目線を同じにして話を聞くことから始めました。
丹羽   聞く工夫もいる。
竜香   私は、よくコーヒーを飲みに誘うんです。息子は髪染めてカチャカチャ(の身なり)ですよ。そして、こんな僕と歩くと恥ずかしくないって聞くんです。全然と答えて堂々と一緒にいましたね。普通はもっと注意するんでしょうけど、私は一切いわない。娘も髪をくり色に染めてちょっと化粧して学校に行ってましたが、この子は勉強はできたので学校の先生も注意しない。だから、こっちもとやかく言いませんでしたね。
丹羽   放任ばかりではなかったでしょ。竜香さんなりの教育があったはず。




10年や20年では分からぬ

竜香   私は子どもに、自分は何ができるかというテーマを与えて育てましたね。息子は高校出たら中国に一人で渡って中国語を覚えました。それから大学に行きたいと言い出して、自分で台湾の大学を探して卒業。娘は今、看護師の勉強をしています。でもね、先生、私は子育てに成功したなんて思っていません。女は子どもと一生、目に見えないへその緒で結ばれているものなんですよ。
丹羽   子育ては十歳でどうとか、二十歳、三十歳でこうだとかで決まるものではない。いい大学、いい会社に入ったから成功したともいえない。最後までわからんものです。



生きていく強さ

竜香   私は、学ぶというのは勉強だけでなくて、生きていく強さを身につけることだと思っています。勤めたら自分を会社に合わせるように学んで努力せんといかんね。今は、自分の思うようにならんとすぐ辞めるでしょ。思うようにならんのは当たり前。逆風でもへこたれないガッツがない。楽な方へ易き方へばかり流れる。だから命もなんもかも軽くなってしまっている。
丹羽   自分の損得だけを先に考え、謙譲の精神なくて会社勤めや男女の仲もうまくいくはずがない。
竜香   こうして話していると、なんか普通の先生と違いますよね。頭の更紗もいいムードだし…なんか占い師みたい。
丹羽   なーん。何回も死んできたしやろ。(笑い)
竜香   今おいくつですか。生年月日は。(笑い)
丹羽   えーっと、二百十六歳やったかな。
竜香   そうね、そのくらい生きるたくましさが今、必要なんですよね。(笑い)



にわ・としお 金城大短大部日本画教授
対談を終えて:竜香さんも子育ては大変だった。また、女性の考え方を聞かせてもらった。人生は男と女、親と子、そして社会との関わりの中、波風、嵐を受けてもへこたれず生き抜くということか。